東京高等裁判所 昭和48年(く)56号 決定
被告人 斎藤義男
〔抄 録〕
なるほど、所論が指摘するとおり、前記三月八日付斎藤医師の診断書には、被告人が胃潰瘍で悪心嘔吐腹痛等のため同月一〇日の公判には出頭不可能の状態にあり、今後約一月間の入院安静加療を要する旨および右八日の胃レントゲン検査では胃潰瘍はかなり良くなっている旨の記載がある。しかし、検察官の保釈取消請求書添付の司法警察員作成の昭和四八年三月一四日付被告人の公判不出廷事情にかかる調査報告についてと題する書面によれば、被告人は同年二月一三日に斎藤胃腸病院に入院して以来レントゲン、胃カメラなどで精密検査を受け、これに基づき治療を受けているが、二月二六日および三月一二日にいずれも二時間被告人から仕事上の書類整理のためという事由で外出を申し出て許可され外出していること、ならびにこの間の三月一〇日の公判には医師は病状に影響しないと思うから出廷を許可するといったが、被告人から悪心嘔吐腹痛等の症状を訴えられた趣旨の記載がある(所論も、右三月一二日には被告人が納税申告のため浦和税務署に赴いたと認めている。)。したがって、胃潰瘍の症状は精神的な影響を受けることが多いから、被告人が税務署に出頭する等自己の所用を達することは可能であっても、公判廷には出頭困難であると感ずることも考えられないではないけれども、原決定が右書面に基づき被告人の病状は前記公判期日に出頭することができない程のものではなかったと判断したことは、これを不当とすることはできず、所論のような誤りがあるとはいえない。
(江碕 宮脇 桑田)